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執筆者の写真これぽーと

これぽーと的よかった展覧会2024

2024年もこれぽーとを読んでいただきありがとうございました。今年もこれぽーと執筆陣が選ぶ2024年のよかった展覧会を公開します。

 

大澤夏美(ミュージアムグッズ愛好家)

●4園連携特設展示「ようこそデザニャーレ-東京どうぶつえん すいぞくえんデザイン室-」(井の頭自然文化園)

動物園・水族館におけるデザインって何だろう?をテーマに、東京動物園協会の4館園(上野動物園、多摩動物公園、井の頭自然文化園、葛西臨海水族園)のデザイン活動を紹介する展覧会。上記館園には一部を除きインハウスデザイナーがいるんですよ…! 大学でデザインを学んだ身として、周囲に動物園にまつわるデザインをやりたい人が多かった記憶があるんです。デザインとミュージアムの架け橋になるような画期的な展覧会でした。 あまりにも好きすぎて、葛西臨海水族園のインハウスデザイナーさんをお招きしてトークイベントやっちゃったくらいです。こちらもぜひ見てほしい!


●「画業40周年記念 上條淳士展 LIVE」(弥生美術館)

スタイリッシュな画作りと革新的なテーマで一世を風靡した、上條淳士の漫画作品を振り返った展示。弥生美術館の現代の漫画作品や作家を丁寧に展示する取り組みにはいつも頭が下がります。 音楽をテーマにした漫画としてあまりにも偉大な「To-y」も大好きですが、青春ハードボイルドのド名作「SEX」の原画をまとめて見られたことが嬉しすぎた…私はカホちゃんのような女性に今もずっとなりたいの…。 テーマもキャラクターも大好きですが、この画作りの巧みさは若い世代にも読みつがれてほしい〜!という願いを込めて。


●第9回特別展示「驚異と怪異—想像界の生きものたち」(国立アイヌ民族博物館)

2019年秋に国立民族学博物館で開催された特別展の巡回展で、北海道ならではの資料や取り組みが紹介されていた。そう、全国巡回するならこうやって、そのテーマに合ったその土地の資料がちゃんと見たいのよ…それが「巡回」ってもんでしょーよ!と熱くなれました。 特に、「アイヌの想像界」の章で山丸ケニ氏が描いたイラスト「ウエクㇽ」が印象的。アイヌの文化に絵を描くという行為が存在しない中、「絵で残されていない対象をどこまで描くか/描かないか」という問題に対してどうアプローチするかが読み取れました。好きすぎて下記の記事でも紹介した展示でした。

 

塚本健太

●「西川勝人 静寂の響き」(DIC川村記念美術館)

ロスコ・ルームなどDIC川村記念美術館を代表する作品群に触れた後、階段を上がると現れるのが壁一面に広がる《静物》(2005)です。自然光が差し込む展示室の中、静謐な空間での鑑賞体験はきっと記憶に残るものになるでしょう。2025年春で休館になってしまうDIC川村記念美術館にぜひ伺ってみてはいかがでしょうか。

 

Naomi

Nerhol 水平線を捲(めく)る(千葉市美術館)

第一生命ギャラリーでのVOCA賞受賞記念の個展や、原宿MASSでの個展、六本木のYKGなどで展示を長らく観ていた方々だったので、好きなミュージアムの一つである千葉市美での展覧会とあって、とても楽しみでした。 コレクション群との展示や、館内のレイアウトをいかした展示など、Nelholらしさたっぷりの見ごたえある展覧会でしたし、ミュージアムでの開催ならでは、だったのが、関連イベントの数々。飯田さんが教えるワークショップ「円から円でない形を彫り出す―Nerhol《circle》を作ってみる」に、実際に参加しました。 ただ観るだけではわからなかった、創作の裏側を実感として味わえたのは非常に貴重、かつ嬉しかったです。 2025年は、これまた好きな埼玉県立近代美術館での巡回展が予定されています。果たしてどんな展示に進化するのか、開催が待ち遠しいです。 ちなみに余談ですが、同時期に開催していた、つくりかけラボ「齋藤名穂| 空間をあむ 手ざわりハンティング」もとても良くて記憶に残りましたし、やっぱり千葉市美術館、好きだなーと思いました。


没後50年 福田平八郎(大阪中之島美術館)

2024年、どうしても観たかった企画展の一つでした。 関西に行く予定にくっつけて訪れることができ、本当に本当に嬉しかったです。


●中﨑透 企画展「Ding-dong, ding-dong ~Bells ringing at the bottom of the valley~」(SHIBUYA SKY 46階 屋内展望回廊「SKY GALLERY」)

渋谷駅直結の高層ビル「SHIBUYAスクランブルスクエア」の最上階、展望回廊に作品を展示する「SKY GALLERY | EXHIBITION SERIES」の第7 段。現代美術家の中﨑透さんが、渋谷の街で行った取材やインタビューから、インスタレーションのようにさまざまな作品を展示しました。 今やインバウンドの方々がすっかり戻り、連日チケットが完売するほど混雑している回廊での開催そのものがまずすごいですし、たくさんの人に思いがけずアートと出会う場を提供していることが、とてもユニークで、これからも続いていってほしい企画だと思っています。 ちなみに年明けには、ヘラルボニーさんの企画展が予定されています。


3つ、ということでしたが・・・すみません、他にも大型展からギャラリーでの展示まで、多種多様な展覧会がたくさんあって印象深い1年でした。

京都での「村上隆 もののけ京都」や、国立新美術館ほかで開催された、「遠距離現在 Universal / Remote」、田名網敬一さんの大回顧展、「荒川ナッシュ医 ペインティングス・アー・ポップスターズ」は、いずれも強く記憶の残りました。また、ギャラリー小柳さんと森岡書店さんのコラボ展「One Shingle Book」も秀逸でした。アーティゾン美術館での「ブランクーシ 本質を象どる」や、いま開催中の毛利悠子さんの企画展とコレクション展も良かったです。そして始まったばかりですが、東京都現代美術館の坂本龍一さんの展覧会、さすがの規模でものすごかったですが、「MOTアニュアル」「MOTコレクション」も素晴らしかったので、合わせてぜひゆっくり観てほしいです。

 

・執筆者プロフィール

大澤夏美(ミュージアムグッズ愛好家)

札幌市立大学でメディアデザインを学ぶ。北海道大学大学院文学研究科(当時)に進学し、博物館経営論の観点からミュージアムグッズを研究し修士課程を修了。会社員を経てミュージアムグッズ愛好家としての活動を始める。現在も「博物館体験」「博物館活動」の観点から、ミュージアムグッズの役割を広めている。著書に『ミュージアムグッズのチカラ』シリーズ(国書刊行会)、『ときめきのミュージアムグッズ』(玄光社)、『ミュージアムと生きていく』(文学通信)がある。ホームページ:http://momonokemuse.starfree.jp


塚本健太 一橋大学大学院 社会学研究科に在籍。都市計画・まちづくりを専門とする。2000年生まれ。神奈川県寒川町にて鉄道廃線跡を保全し活用していく活動をしていたことが縁となって、70年前に製造された本物のディーゼルカー・キハ10を譲り受けた。 現在はどのようにこの車両をアーカイブしながら地域に開くことができるか、模索しているところである。


Naomi

アートライター、記者、編集者。服作りを学び、会社員として採用PR、広報、Webメディアのディレクター職などを経て、2020年から都内を拠点にフリーランスのライターとして活動。文化芸術やデザイン、ファッションなどの領域を得意とする。2024年3月に京都芸術大学芸術学部アートライティングコースを卒業し、学芸員資格を取得。https://lit.link/NaomiNN0506

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